宅配便の“再配達ゼロ”を目指したマンション宅配ロッカーの利用効率向上プロジェクト 2017.04.17
今回の取り組みは、宅配サービス会社へのヒアリングと、宅配ロッカーのパイオニアであるフルタイムシステムが集積したデータの分析を行い宅配ロッカーの利用に関する現状の課題を抽出することからスタートしました。課題を検討した結果、利用状況に適した新しい宅配ロッカーの開発や入出庫の回転率の向上策など、ハードとソフト(運用)の両面から4つの対策を考案しました。
<宅配ロッカー利用効率向上 4つの対策>
(1)利用状況に適した宅配ロッカーの新構成によるBOX数の増加
(2)宅配ロッカーの入出庫回転率の向上を図る
(3)宅配ロッカーへの入庫数の減少を図る
(4)「宅配ロッカーの利用情報閲覧サービス」の提供
本対策は、本年6月下旬に販売開始予定の大規模分譲マンション「パークタワー晴海」(東京都中央区晴海2丁目・総戸数:1,076戸)より導入する予定です。なお今後、三井不動産レジデンシャルが分譲するマンション(※1)においても本対策の導入を順次進め、宅配ロッカーの利用効率向上を図ってまいります。
(※1)現在、開発中の物件も一部含みます。なお共同事業のプロジェクトの場合は、物件によります。
■宅配ロッカーの利用効率向上プロジェクト開始の背景
宅配物は、Eコマース市場の拡大に伴って増加の一途を辿っており、取扱い個数は2009年から2013年の5年間で13%(4.3億個)も増えています(※2)。その結果、配達員の人手不足などの課題が生じており、中でも、受取人不在の場合の「再配達」業務は、ドライバー9万人分、年間1.8億時間の労働に相当する労働損失、また約42万トンのCO2排出という環境損失を生じさせるなど(※3)、大きな社会的損失に繋がっていると言われています。
(※2)国土交通省「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」第1回資料より(2015年6月5日開催)
(※3)国土交通省「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」報告書より(2015年10月14日発表)
我々は、この再配達率を低減させるため、マンションのような集合住宅では「宅配ロッカー」の導入が有効と考えました。しかし、宅配ロッカーの設置スペースは、容積率算入の対象となるため、必要最低限の数のBOXを設置することしかできないのが現状であり、まずは、限られたスペースと宅配ロッカーをいかに効率的に活用するかが重要となります。
そこで、2016年6月から両社横断のプロジェクトチームを立ち上げ、宅配ロッカー利用に関する課題を抽出し、宅配サービス会社へのヒアリングを行い、対策の有効性を確認しながら、4つの対策を考案しました。
■宅配ロッカー利用効率向上4つの対策
(1)利用状況に適した宅配ロッカーの新構成によるBOX数の増加
近年の宅配物は、数量が増加している一方で、サイズは小型化しており、三井不動産レジデンシャルとフルタイムシステムが提供する既存マンションの宅配ロッカーでは、「S」サイズ(内寸法:W 411×D 546×H 246 mm)のBOXの利用が、ロッカー利用全体の約80%を占めています。さらに、宅配サービス会社に実施したヒアリングでは、同社が取り扱う荷物のうち約60%が、ロッカーの「S」サイズよりさらに小さい「80サイズ」(3辺の合計が80cmまでの荷物)であることが分かりました。
その対策として、小型荷物に最適な新サイズのロッカー「SS」サイズの(内寸法:W411×D546×H108mm)BOXを開発し、従来と同じ設置スペースで、より多くのBOXを設けることができるようにしました。たとえば総戸数50戸のマンションの場合、従来のロッカー構成では、BOX数は8個で、総戸数に対するBOXの割合は16%ですが、新構成ロッカーではBOX数が12個に増え、総戸数に対する割合は24%になり、従来比で1.5倍のBOX数に増加させることができます。
(2)宅配ロッカーの入出庫回転率の向上を図る
三井不動産レジデンシャルが過去に首都圏で分譲した300戸以上のマンションのうち、27棟に設置された宅配ロッカーを調査したところ、ロッカーに空きがないことを示す「満杯警報」の受信数は1年で合計11,490件におよぶことが分かりました。つまり、宅配サービス会社が配達に訪れても宅配ロッカーに空きがなく入庫できないという状態が、1棟のマンションで、1日平均で約1.2回発生している計算になります(11,490件÷365日÷27棟=約1.2回)。
①滞留通知サービス改良による入出庫回転率の向上
現在でも、宅配ロッカーにある荷物が滞留した場合、宅配ロッカーの入出庫回転率を向上させるために、フルタイムシステムが運用する「FTSコントロールセンター」によって、ロッカーの利用状況データを取得し、メール・FAX・自動電話による滞留通知を行うことで、荷物の取り出しを促しています(24時間・365日)。
この対策を、今後はさらに改良し、4日目・10日目・20日目のサイクルで行っている滞留通知を、2日目・4日目・10日目・20日目のサイクルへと変更いたします。滞留2日目の通知を追加することで、より早い荷物の取り出しを促します。
② 着荷通知サービスの改良による入出庫回転率の向上
現在でも、宅配ロッカーに荷物が届いた場合、マンションの集合玄関(メインエントランス)にて着荷を通知するサービスを実施し、宅配ロッカーの入出庫回転率を向上させています(一部マンションを除く)が、この対策を今後はさらに改良します。
キーメーカー各社に開発を依頼し、メインエントランスだけでなく、キーシステムが設置されている全てのセキュリティーゲート(サブエントランス等)においても着荷を通知するシステムを順次導入します。この対策により、メインエントランスを使用しなかったことで帰宅時に着荷の有無が確認できないという状況を防ぎ、より早い荷物の取り出しを促します。
(3)宅配ロッカーへの入庫数の減少を図る
多くのショッピングサイトが利用しているメール便は、2015年度で約53億個が利用されています(※4)が、既存のポストに入らないサイズであるために宅配ロッカーが利用されるケースが多く、宅配ロッカーのBOXに空きがなくなる原因となっています。
(※4)国土交通省 2016年7月発表 「平成27年度 宅配便取扱実績について」
その対策として、「メール便対応ポスト」を集合住宅の郵便受けに導入してまいります。新型ポストは、投入口を流通数の多いメール便サイズ(W340×D260×H35mm)が投函できる大型のサイズとします。この新型ポストにメール便を投函していただくことで、宅配ロッカーの利用頻度減少を図ります。
(4)「宅配ロッカーの利用情報閲覧サービス」の提供
宅配ロッカーが満杯で、住民不在時に宅配ロッカーに荷物を預け入れることができないという状況がある中、配達ドライバーが運搬車などから荷物を運ぶ際、宅配ロッカーに空きがあるかどうかを事前に確認することができれば、配達効率を向上させ、ドライバーの業務負荷削減につなげることができます。
宅配ロッカー満杯時の対応策として、「宅配ロッカーの利用情報閲覧サービス」を構築し、宅配サービス会社の配達員に提供を予定。配達ドライバーは、専用Webサイトにログインすることで配達先のマンションの宅配ロッカーの空き状況を把握することができ、住民不在時に宅配ロッカーの前まで荷物を運んだものの、空きがなく引き返すなどの無駄を省くことで、配達効率を向上させることができます。
■「パークタワー晴海」に導入する個別サービス
パークタワー晴海では、上記(1)~(4)の対策のほか、以下のサービス導入を予定しています。
・コンシェルジュでの「冷蔵・冷凍品お預かりサービス」
・各住戸専用宅配ロッカーの設置(プレミア住戸に限る)
【本リリースに関するお問合わせ】
株式会社フルタイムシステム プロジェクト推進部
TEL 03-3851-5188